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付帯設備は新品で返すもの?

クロス・カーペットは新品で返してもらえるか

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4年間住んだ入居者が退去することになりました。契約には「借主は、故意過失を問わず、建物の毀損・滅失・汚損その他の損害につき損害賠償をしなければならない」という条項を設けてあります。クロスやカーペットなどをすべて新品にして明け渡すよう請求できるでしょうか?

原状回復義務の内容

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借主には、賃貸借契約終了の際、その物件をもとの状態に戻してから、貸主に返還すべき義務があります。これは「原状回復義務」というものです。
しかし、貸主は建物を貸すことで家賃収入を得ていますので、明け渡しのときにすべて新品にして返還されるのであれば、貸主はそれだけ不当に利益を得ることになります。
そこで原則として、「通常使用による損耗」については、修繕費用を請求する権利はないのですが、故意・過失による損耗の回復に限っては請求が可能です。

特約は有効か?

では、質問のように「借主は、故意過失を問わず、建物の毀損・滅失・汚損その他の損害につき損害賠償をしなければならない」という特約がある場合はどうでしょう。
この場合、貸主は「通常生活による損耗」についての修繕費用負担を借主に請求できるのでしょうか。
この点について、最近の裁判例では質問のような特約がある場合でも「ここでいう損害には、賃貸物の通常の使用により生じる損耗は含まれない」と、特約の効力を限定的に解釈したり(名古屋地裁/平成2年10月19日判決)、特約自体の有効性を否定したりしています。つまり、「通常生活による損耗」は、やはり貸主が負担すべきとする傾向にあるのです。
ですから特約があっても、原則として「通常生活による損耗」について借主側が修繕する必要はないと考えられます。したがって、借主が普通に生活をしている限りクロスやカーペットを新品にしての返還請求をすることはできません。

借主負担は一切認められないか

ここで貸主側からは「〝通常使用による損耗〟の修繕費用を借主に請求することは絶対に認められないのか」という疑問が出るかもしれません。
実はこの点については、※「強行法規(民法90条参照)」に反しなければ、借主が負担すべきという特約が有効になる場合があります。
※ 強行法規……当事者が合意する・しないにかかわらず、守らなければならない規定のこと。
では、どんなときに借主に負担してもらうことが可能になるのでしょうか。
判例の流れは、
① 特約の必要性があり、暴利的でないという客観的で合理的な理由が存在すること
② 通常の原状回復義務を超えた修繕義務を負うことを借主が特約から認識していること
③ 借主が特約による義務を負担すると意思表示をしている
以上の3つの要件が必要であるとしています(伏見簡裁/平成7年7月18日判決)。
これらを一つずつ具体的に見ていくと、以下のようなことが必要になります。
①では、物件が周辺の家賃相場と比べて明らかに安いため修繕費用くらいは借主に負担してもらう必要があること、また、修繕の範囲や費用が妥当で、特に暴利的ではないこと。
②では、「通常使用による損耗」の修繕費用は借主が負担する必要はないという原則があるが、この契約では例外的に負担することになっている、と契約者本人に理解させること。
③では、将来借主の負担を予想させる修繕費用がどの程度になるのか、工事項目、工事内容、工事項目ごとの概算費用を具体的に明示しておくこと。
もし、このうちのどれかが欠ければ、貸主は借主に「通常使用による損耗」の修繕費を請求できなくなります。
もっとも特約の有効性については、居住用物件と営業用物件で、多少判断が異なります。
居住用物件では、述べてきたように厳しい要件を満たす場合にのみ有効で、簡単には認められないのが現状です。
POINT:営業用物件は特約の効力が高い
一方、営業用物件については、居住用物件に比べて特約の効力が有効と判断されるケースが多い傾向にあります(東京地裁/平成17年5月18日判決、東京地裁/平成17年4月27日判決、東京高裁/平成12年12月27日判決)。

原状回復特約と消費者契約法

では、原状回復に関して契約書に特約がある場合、「消費者契約法」では、どのように判断されるのでしょうか。
消費者契約法は、事業者が不当な方法で契約を結ばせたときに、消費者がその契約、不利益になる契約条項の全部(または一部)を無効にすることを認めた法律です(平成13年4月1日施行)。
消費者契約法が適用される賃貸借契約においては、「通常の使用による損耗」を借主が負担するという特約が有効かが争点となった場合、借主に有利な判断が下される可能性が高くなります。
判例を見ても、大阪高裁はこうした特約が「借主の利益を一方的に害するもの」であり、消費者契約法10条に反するため無効であると判断しています(平成16年12月17日判決)
今後は、この判例のように、消費者契約法を根拠に原状回復特約について検討するケースが増えていくことが予想されます。
ただし、具体的な事情はそれぞれ異なるため、常に特約の効力が無効と判断されるかどうかは一概にはいえません。

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